KEYSTONE 工房レポート

西 恵介
1980 年東京生まれ。
小学生の時に家にあったサイモン&ampampガーファンクルのテープを聴き音楽に目覚 める。小学校の高学年からギターを弾く傍らエレキギターの構造や機能などに 興味を抱き自分でカスタマイズ等をするが全く上手くいかず深みにはまり始め る。
高校卒業後にはギターの腕前は全く上達しないものの楽器の簡単な調整位は出 来ると勘違いしたままESPギタークラフトアカデミーに入学。基本的なギタ ーの構造や知識を学びつつ木工の楽しさや手工具を使った作業に没頭し二年間 でカリキュラムを終え卒業。

その後単身渡米しアリゾナ州の Roberto-Venn School of Luthiery に入学。製作 等を学びつつもアメリカの風土や文化にすっかりやられてしまい卒業後も在米 を切望し何とか米国内での就職先を見つける。

見つけた就職先はマサチューセッツ州ボストンに拠点を置く First Act Inc.の新 設されたカスタムショップにてギタービルダーとしての就職で、研修期間を含 め約二年の間で多くの著名ミュージシャンに一本モノのカスタムエレキギター を製作する。
同会社でギタービルダーとして従事中に上司であったGibson Custom Shop出 身の Kelly Butler 氏の友人である Mario Beauregard 氏に出会いそのストイッ クな精神性と天才的なデザインセンスや技術に触れ師事を熱望。
数回断られる も、あきらめの悪さが功を奏し弟子入りを許可され米国滞在ビザが切れるタイ ミングで First Act Inc.を退社し、単身カナダのモントリオール郊外に工房を構 える Mario 氏に弟子入りする。
約一年間の弟子入り期間中に氏の精神性や構造 理論等を学び 2006 年に帰国し一年の準備期間を経て 2007 年自身の工房を立ち 上げる。 立ち上げ当初はマーチン社のOMサイズをベースにしたモデルMCModern Classicのみを製作していたが現在ではジャンボサイズからOOサイズまでの 7 種類のボディサイズであらゆるニーズに対応出来るようラインナップを揃えて いる。 機能性を重視しつつも見た目の美しさにもこだわり抜いた、3Dカッタウェイ、 スクープトアウェイ、コンター加工、等操作性や取り回しを向上させるオプシ ョンも充実し、近年ではナイロン弦を除く全てのモデルでコリングスにヒント

を得た独自のボルトオンのネックジョイント機構を採用し独自のサウンドアプ ローチを進化させ続けている。 現在では数人の弟子と共に年間数百本を越える修理を行いながら年に 10 本程度 のギターを作り、国内外の展示会にも精力的に参加し高い評価を得ている。